" &image=ctgic; &style=stDetail1;2014/02/12 読み物&style;&br; &style=stDetail2;ひなまつり　〜さくらの季節と若葉の君〜&style;&br; &br; ひなまつり──。&br;東方から伝えられ、今ではすっかり定着した女の子のための春のお祭りです。&br;&br;桜の花びらの舞うなか。&br;着飾った女の子たちが、&br;モーグリたちが設置した雛壇で待ち合わせ、&br;互いの持ち寄ったお菓子を交換し合ってお茶している。&br;&br;そんな風景が見られるのも、ひなまつりです。&br;&br;なかには、&br;近東の最新技術である撮像機械を用いて、&br;自分たちの晴れ姿を思い出に残そうとする者もいるとか……。&br;&br;ヴァナ・ディールに生きるすべての女の子たちが、&br;今年も健やかで楽しい年を送れますように。&br;みなさま、良きひなまつりを──。&br;&br; &image=hr02;&br; ユーイ・テラは、ウィンダス出身の冒険者だ。&br;職業はシーフ。もちろん、冒険者としての盗賊であって、そこらの泥棒と一緒にしてもらっては困る。&br;&br;ユーイがシーフを目指したのには理由があった。&br;とある大盗賊に憧れていたからだ。&br;&br;「すっごく美人で、すっごく良いひとなのですよ！」&br;子どもの頃、聖都の近くに存在するホルトトという遺跡にうっかり迷い込み、&br;迷子になっていたユーイを『こんなところに近づいちゃだめよぅ』と救ってくれた。&br;それ以来の憧れの君なのだ。&br;&br;ほかには誰も呼んでいないが、&br;ユーイだけは、こっそり《若葉の君》と呼んでいる。&br;「だって、昔と全然変わらないのです。いつまでも若々しくって！&br;それに、あたしたちとちっとも変わらないしゃべり方をします。&br;あれがきっと精神を若く保つ秘訣なのですよ！」&br;&br;その大盗賊の名前はナナー・ミーゴといった。&br;&br;十六になったとき、ユーイは必然としてシーフを目指した。&br;ウィンダスを拠点として冒険生活を送ることになり、&br;高名な盗賊であるナナーに、シーフの自分を売り込みにいった。&br;ヤグードの数珠を何回彼女の元へと運んだことだろう。&br;&br;それなのにナナーは、ユーイのことをあまり覚えていないようなのだ。&br;&br;新魔法であるフェイスの魔法を修得してわかった。&br;ナナー・ミーゴもフェイスの被験者のひとりに指定されていて、&br;もちろん、ユーイはすぐさまナナーの元を訪れた。&br;&br;新魔法フェイスは、&br;ジュノ魔法学会が編み出した、&br;信頼だとか親愛だとか友情だとか、そういった心の繋がりを利用して、&br;他者の分身を実体化させるという魔法である。&br;&br;相手との信頼関係が、フェイスには大切なのだという。&br;だが、ナナーがユーイについて覚えていたのは、ヤグードの数珠を渡したことだけ。&br;噂通りに、北の地で大きな功績をあげねばインパクトに欠けるのだろうか。&br;落ち込むユーイである。&br;&br;「まあ、良いのです。&br;《若葉の君》は、どうせあたしひとりのものではないのです。&br;それに、今のあたしにはもっと大事なことがっ」&br;&br;ユーイは、&br;ちょっとした偶然から近東の魔法仕掛けの撮像機械《虚像の器》を手に入れた。&br;一日だけの約束で借りたのだ。&br;「こ、これはひょっとして、チャンスなのです！」&br;&br;折り良く今は春の盛り。&br;ひなまつりが始まっている。&br;&br;ユーイは、覚えたばかりのフェイスの魔法を使えば、&br;自分とナナー・ミーゴの姿を桜を背景に写像として残せることに気づいたのだ。&image=im00;&br; &image=hr03;&br; 聖都の広場に設置されている雛壇の前に東方衣装に着替えて赴き、&br;そこでフェイス「ナナー・ミーゴ」を呼び出そうとした。&br;ところが、&br;魔法の手ごたえはあるのに、フェイスが呼び出せない。&br;「あれれ？　《若葉の君》の前では呼び出せたのに」&br;何度繰り返しても結果は同じ。&br;「そういえば、最初に試したときも街の外でしたね」&br;関係があるのかないのかわからないが、いつまでも雛壇に固執しても始まらない。&br;ようするに、雛壇っぽければいいのだ。&br;&br;ユーイは撮像のベストポジションを求めて街の外へと出た。&br;タロンギ大峡谷に、雛壇のようになっている丁度よい段差を見つけた。&br;《虚像の器》を離れた岩の上に置く。&br;スイッチを入れるための仕掛けを整える。&br;それから魔法を唱えて、フェイス「ナナー・ミーゴ」を呼び出した。&br;&br;《若葉の君》の分身がユーイの傍らに忽然と姿を現した。&br;きょろきょろと左右に首を振って、&br;「てきはどこぉ？」&br;「あ……そっか。この格好かぁ」&br;ナナーは短剣を構えて敵を探していた。&br;剣を手に持ち軽鎧を着込んだ麗しの君は格好よいけれど、&br;東方衣装姿のユーイと並べると明らかに違和感がある。&br;&br;「ま、我慢するのです。ではっと」&br;ぺたんとユーイは段の上に座る。&br;自分の脇をぺしぺしと片手で叩いて、ほらと促すのだが。&br;「てきは！　てきはどこぉ！」&br;ナナーはまだ短剣を構えたまま敵を探していた。&br;「あ……座ってくれませんか」&br;&br;フェイスで呼び出す仲間はユーイの思う通りに振る舞ってくれるわけではない。&br;元のナナーの性格をそのまま映したような行動をするわけで……。&br;「あの、座っていただけませんかね」&br;ナナーのほうを向いてお願いしてみる。&br;「あなた、あたしに命令するのぉ」&br;「めめ、めっそうもない！　《若葉の君》にそのような無礼なことはしないのです」&br;「なにかしら、その呼び名」&br;「略して若君！」&br;「……あたしは女よぉ？」&br;「もちろんですとも！」&br;だから格好いいんじゃないか。&br;「あなた変わった子ねぇ」&br;「えへへー。誉められてしまいましたか」&br;「誉めてないけど」&br;そう言って、戦いの姿勢を取り続けた。&br;&br;何を言っても座ってはくれない。&br;「はあ。しかたないのです。では、立ったままで写してしまいましょうか」&br;&br;向きなおって、手にした紐を引っ張った。&br;紐を引っ張ると、地面に立てていた棒が倒れ、&br;支えを失った板が重しのために落ちる。反対側が跳ね上がり載せていた卵を飛ばした。&br;飛んでいった卵は数歩離れた先の籠のなかに入った。&br;籠の鼻先には鎖に繋がれたエルシモニュートがいて、卵を食べようと首を伸ばし鎖を引く。&br;引いた鎖が滑車を回して、からからと糸を巻き取った。&br;ゆるめていた鎖がピンと張ると、《虚像の器》の撮像スイッチがカチンと入った。&br;&br;何も起きなかった。&image=im00;&br; &image=hr03;&br; 「おや？」&br;本来ならば、&br;光のクリスタルを消費して、まぶしい光が《虚像の器》から放たれるはずだ。&br;「おかしいですね。故障しまし──」&br;段差を降りて機械に近寄ろうとしたユーイはぎくりと身をすくませた。&br;「ゴブリン……」&br;岩陰から悪名高い獣人が現れて、&br;甲高い叫び声をあげながら、ツルハシのような武器で襲い掛かってきたのだ！&br;&br;「しまった……！」&br;後悔しても遅い。タロンギには好戦的なモンスターが滅多に出てこないからと油断した。&br;&br;着替えてしまって、剣ひとつ持っていなかった。&br;だが、そんなユーイとゴブリンの間に、跳びこんできた影ひとつ。&br;日差しを受けて閃いた短剣が、ゴブリンの急所へと鮮やかに突き刺さる。&br;瞬く間にゴブリンは倒れた。&br;「キングコブラホールド……」&br;まさに毒蛇の一撃だった。&br;&br;「ふう。あぶなかったわねぇ」&br;「わ、若葉の──じゃなくて、ナナー・ミーゴさま！」&br;「あらあ？　あたしのことを知ってるのぉ？&br;うん？　この子、あたしのフェイスねぇ……」&br;段差の上で立ったままのフェイス「ナナー・ミーゴ」を見て言った。&br;「だめじゃないの、あなた。&br;あたしの分身なんだから、もっと格好よくしないとぉ」&br;自分で自分の分身にダメ出しをしていた。&br;&br;「あ、あたしが戦う意思を出さなかったから……」&br;「あらぁ。そうなの？　じゃあ、しかたないわねぇ。&br;でも、これからは気をつけたほうがいいわよぉ。じゃあねぇ」&br;そう言って、ひらひらと手を振って去っていった。&br;&br;「わ、《若葉の君》……また、助けてもらえたですよ！　感激ですよ！&br;ああ、しまった。&br;今こそ、撮像機械で写すチャンスでした！　なんというもったいない。&br;……そういえば、どうして写せなかったんでしょうか」&br;&br;苦労して生け捕りにしたエルシモニュートは逃げてしまっていたし、日は傾いていていて夕暮れに近くなっている。&br;「はあ。もう……写せませんかねぇ。残念です」&br;そろそろ聖都に帰って撮像器を返さねばならない時間だ。&br;それでも、本物に会えただけ今日は思い出に残る一日になった。&br;「しかたない。帰りますかね」&br;&br;　○&br;&br;《虚像の器》からは、光のクリスタルがなくなっていた。&br;ユーイがフェイスと話していた一瞬の隙に抜き取られたのだ。&br;それが撮影ができなかった理由だった。&br;&br;タロンギ大峡谷をフェイスとともに去っていくシーフの後輩を見つめながら、&br;ウィンダスの大盗賊は、ちょっとだけ肩をすくめる。&br;「ごめんねぇ。&br;でも、分身とはいえ、お雛様みたいに写されるのは恥ずかしいし」&br;&br;肩をすくめ、手のひらに乗っている光のクリスタルを放ってお手玉をする。&br;桜の花びら舞う空高くへと放られたクリスタルが、夕日を浴びてきらりと光った。&image=im00;&br; &image=im00;&image=11746_5.png; Story : Miyabi Hasegawa&br;Illustration : Mitsuhiro Arita&image=im00;&br; &image=hr02;&br; &li=ng01;開催期間&li;&br; 2014年2月19日（水）17:00頃〜3月4日（火）17:00頃まで&image=im00;&br; &image=hr03;&br; &li=ng01;モーグリの出現場所と飾り付け&li;&br; イベント期間中、以下のエリアにモーグリが出現します。また、それぞれのエリアには、「ひな壇」が飾り付けられる予定です。&br;&br;・南サンドリア(J-9) &br;・北サンドリア(D-8) &br;・バストゥーク鉱山区(I-9) &br;・バストゥーク商業区(G-8) &br;・ウィンダス水の区(北側F-5) &br;・ウィンダス森の区(K-10) &br;&br;モーグリに話しかけると、ひなまつりにちなんだアイテムを受け取ることができます。&image=im00;&br; &image=im00;&image=11746_12.png; "