" &image=ctgic; &style=stDetail1;2012/06/26 読み物&style;&br; &style=stDetail2;もうひとつの大河&style;&br; &br; 夜空を流れる星の河が美しく光り輝く夏がやってきました。&br;恒例のあの行事の季節。&br;モーグリたちの準備も万端。&br;さあ、銀河祭の始まりです!&br;&br;祭りの謂れにもなっているヤヒコ皇子とアムディナ姫の劇は今年も開かれるようです。&br;選ばれた役者たちはこの日のために幾日もかけて練習したとか。&br;&br;ところが、バストゥークの街では、ちょっとした事件のために、急きょ役者が交代になってしまったとか。&br;&br; &image=hr02;&br; 俺がヤヒコ役なんて、そもそも何かの間違いだったんだ。&br;&br;と、ガルカの戦士レッド・ベアは思っていた。&br;むっつりと口を閉じ、腕を組みながら、群衆に混じって祭りの野外劇を見ている。&br;街路に立てられた飾り笹の葉が揺れ、東方では風の鈴と呼ぶらしい小さなベルがちりりんと鳴った。&br;&br;毎年行われているこの劇は、バストゥークではヒュームの男女が演じるのが常だった。&br;伝説に残っている悲運の恋人たち──ヤヒコ皇子とアムディナ姫。&br;ふたりの逢瀬を再現し、劇のほうはハッピーエンドで終わるのがお約束。&br;そのヤヒコ役を務めるのは、たいていは線の細い、こういってはなんだが、両手斧を振り回したら腕が抜けてしまいそうなヒュームの優男で……。&br;「それがなんで今年は俺だったんだよ」&br;レッド・ベアはため息をついた。&br;「あら、似合ってましたよ?」&br;彼の傍らに付き添って劇を見ている少女が言った。&br;「よしてくれ、マリカ」&br;「照れなくてもよろしいのに……。残念です。あなたのヤヒコ皇子、見たかったな。せっかく台詞も振り付けも頑張って覚えてらしたのに……」&br;「三回に一回はおまえの足を踏んでいたし、五回に一回は台詞を噛んでいたがな」&br;そう返したら、マリカはころころと笑った。&br;&br;自分が野外劇のヤヒコ役に選ばれたと聞いたとき、レッド・ベアは耳を疑った。&br;モーグリの新手のいたずらか、とさえ思った。&br;しかも、相手役がマリカとは。&br;マリカは、同じリンクシェルの仲間で、戦いのときはいつもお世話になっている白魔道士のヒュームだ。&br;&br;レッド・ベアは、アムディナ姫がマリカであることに異存はなかった。&br;ぴったりだと思う。&br;毎年の姫役の娘と比べても遜色ない。&br;華のような美貌とはマリカのことを言うのだろう。&br;彼女が微笑むと、パーティの誰もがそれだけで気分が和らぐほどだ。&br;&br;だが、ヤヒコ役が何故レッド・ベアだったのか。&br;おかげで衣装は特注で頼まねばならなかったし(例年の衣装では身体が入らなかったのだ)、劇などやったことがないから演技は三文役者の域を出なかった。&br;祭りの余興なのだから、肩の力を抜いて気楽にやってくれ、などと言われたものの。&br;結局、慣れない芝居の練習のせいか、三日前になって高熱を出した。&br;とても芝居の練習などできる体調ではなくなった。&br;どうやら病気ではなかったようで、それゆえマリカの治癒の魔法でも治らなくて。&br;熱は収まらず、仕方なく代役を立てることになり……。&image=im00;&br; &image=hr03;&br; 「まあ、おかげで例年通りってわけだが……」&br;こうして祭りの当日にはあっさり熱も引いてしまうのだから、仮病を疑われても仕方のないところ。&br;俺には戦いの重圧のほうがマシのようだと、レッド・ベアはつくづく思う。&br;「皇子があなたじゃないから、つまらないわ」&br;「俺は助かったがな。代役のヤツには迷惑をかけたが、三日しか練習していなくても、俺よりもうまい」&br;&br;やっぱり、ヤヒコ皇子は俺じゃなくて正解だった。&br;レッド・ベアは劇を見ながらそう思い、ついでにふと思いついた疑問を口にする。&br;「そういや、マリカ。なんでおまえまで劇を降りたんだ? アムディナ役まで代役を立てる必要はなかっただろう?」&br;「別に……いいの」&br;「けど、あの男は、さっきから一度も台詞を噛んだりしていないし、相手役の服の裾を踏んでもいないし……」&br;「それはそうだけど」&br;「俺が言うのもなんだが、その……あのヤヒコ皇子はヒュームのわりには格好いいと思うぞ。それに、前からマリカはお姫様の格好をしてみたいと言ってたじゃないか」&br;あら、とマリカが意外そうな顔をする。&br;覚えていてくれたのね、と。まあ、レッド・ベアとてそこまで馬鹿ではない。毎年の銀河祭のたびごとに同じ言葉を聞かされていれば覚えもする。&br;「でも」&br;「でも?」&br;「相手役が、あなたじゃないんですもの……」&br;「は?」&br;なんか妙な言葉を聞いたような。&br;&br;「……? さっぱりわからんぞ?」&br; 首をひねるレッド・ベアの傍らで、マリカがため息をついた。&br;「いいんです、別に。ほら、クライマックスみたいですよ。今年の皇子と姫を応援してあげましょう。ね?」&br;「お、おう!」&br;「はあ……ほんとに、残念……」&br;&br;こちらのふたりの間に横たわる河は、まだまだ当分渡れそうになかった。&image=im00;&br; &image=im00;&image=8870_3.png; Story : Miyabi Hasegawa&br;Illustration : Mitsuhiro Arita&image=im00;&br; &image=hr02;&br; &li=ng01;開催期間&li;&br; 銀河祭は2012年6月29日(金) 17:00頃から7月13日(金) 17:00頃までを予定しています。&image=im00;&br; &image=hr03;&br; &li=ng01;モーグリの出現場所&li;&br; モーグリに話しかけると、イベント内容を聞くことができます。&br;&br;北サンドリア(D-8)/バストゥーク商業区(G-8)/ウィンダス水の区(北側)(F-5)&image=im00;&br; "