" &image=ctgic; &style=stDetail1;2012/12/28 読み物&style;&br; &style=stDetail2;紐解かれる─魔導器─ウェイポイント奇譚&style;&br; &br; 俺だ。&br;ズルコバズルコだ。&br;&br;便利だろう? ウェイポイントってやつは。&br;今回はその謎を華麗に解明するため、&br;魔導器について誰よりもうるさいこの俺が、&br;どうしても知りたいってやつのために語ってやろう。&br;&br;それは、クォン大陸に向かう船の上での話。&br;船首に立って新たなルーンを全身で受け止めていたところ、&br;アナスタズ先生がなんかいろいろ語っていたので、&br;そのときの記録を残しておく。&br;&br;遠慮こそ罪である。さあ、読むがいい。&br;&br;※注)ズルコバズルコ氏の改変があまりにも酷かったため、運営側で適切な表現に修正させていただきました。ご了承ください。&br;&br; &image=hr02;&br; 「すみません、先生! おやつください〜」&br;&br;調査団員の一人、クイ・オリベの猫なで声が甲板に響いた。&br;&br;「さっき食べたじゃありませんか。仕方ないですね……」&br;&br;先生と呼ばれた調査団リーダー・アナスタズは、&br;懐からジャングルクッキーを取り出して彼女に差し出す。&br;&br;「ありがとうございます!&br;もらえるの、わかってましたけど」&br;&br;クッキーを一口で頬張る彼女を横目に、&br;見習い魔導剣士のズルコバズルコが口を挟んだ。&image=im00;&br; &image=im00;&image=9733_2.png; &image=im00;&br; &image=hr03;&br; 「ガキ……だな。&br;貴様には甘〜い甘い、甘ちゃんのクッキーがお似合いさ……」&br;&br;彼らを乗せた機船は、大海ザフムルグを東に横断しつつ、一路クォン大陸を目指していた。&br;ウルブカ大陸付近は海流が速く、航路は慎重に設定する必要があった。&br;そのため、大幅に迂回する必要があり、出発してからすでに7日半が経過していた。&br;&br;長い船旅に慣れていない調査団員も多い。&br;船旅自体が初となるウィストフルバイソンは、&br;強烈な船酔いに悩まされていた。&br;&br;「なぜ私がこんな目に……。ウェェ〜……。&br;これも全て、チェイロマチェイロ様の思い付きのせいですよ。&br;いつもこうなんです。考えるより直感で……ウェッ……ェ……」&br;&br;「きっとそれも、商務大臣としての才覚の一つなのよ。&br;ま、仕事とはいえ……ご愁傷様」&br;&br;スカウト・ワークス(SCT.ワークス)から派遣されたジリアは、&br;彼の背中をさすりながら介抱している。&br;&br;「先生、今回の任務は中の国にそいつを設置することなんですよね?」&br;&br;ズルコバズルコが指差した船倉の中で、&br;黄銅のような金属で作られた「魔導器」が眠っている。&image=im00;&br; &image=im00;&image=9733_5.png; &image=im00;&br; &image=hr03;&br; 「ええ。中の国用に調整された試作品のウェイポイントです。&br;そうそう、クイ・オリベさんには磁場の予見も行ってもらいますよ」&br;&br;「はいっ! 失敗するかもしれませんけどがんばります! 自信ありません!」&br;&br;クイ・オリベが元気に答えた。&br;やれやれといった表情をしたズルコバズルコは、ため息交じりに呟く。&br;&br;「この任務、アムチュチュ様に認めてもらうチャンスだからな……。&br;俺はもう……失敗するわけにはいかない。このルーンにかけて……!」&br;&br;「アムチュチュ様って、インベンター・マイスター(INV.マイスター)の?」&br;ジリアの問いに対し、ズルコバズルコは続けて語った。&br;&br;「アムチュチュ様、最近はクォン大陸から来たっていう技術者に夢中でな。&br;あんな若造の、しかも意味不明な話のどこが楽しいんだっつーの。&br;俺の武勇伝の方が何億万倍もおもしろカッコいいぜ」&br;&br;「何言っちゃってんの?&br;チャプリ一匹も仕留められないくせに」&br;&br;すかさず痛いところを突くクイ・オリベ。&br;&br;「ぐ……ぐおおおぉぉぉぉっ……!&br;くそっ、まずい……! 鎮まれっ、俺のルーン!!」&br;&br;「まあまあ、それくらいにしておいて。もうすぐ着きますよ」&br;こういった状況には慣れているのか、&br;何事も無かったかのようにアナスタズがいさめた。&br;&br;「ところでアナスタズさん、&br;ウェイポイントってどういう原理で動いているんですか?」&br;タイミングを見計らったジリアがアナスタズに問い、&br;「ウィストフルバイソンさんも知りたいことだと思うので」と続けた。&br;&br;「そうですね、この機会に教えておきましょうか。&br;と言っても、私もそこまで詳しくはないのですが……」&br;&br;アナスタズは語る。&image=im00;&br; &image=im00;&image=9733_8.png; &image=im00;&br; &image=hr03;&br; 「話せば長くなるんですが、&br;この磁場を利用したワープ技術は、遥か古代より存在していたようです。&br;その技術がウェイポイント開発のきっかけとなりました。&br;魔導器で制御できるようになったのは最近のことなのです」&br;&br;「へぇ、古代……。&br;そんな昔からあったんですね」&br;ジリアが相槌を打つ。&br;&br;「文献によれば、その魔導器のおかげで&br;大きな戦いで戦況を優位に導いたとも伝えられています。&br;やがて月日は流れ、開拓が禁じられるようになってからは&br;魔導器も使われなくなり、廃棄……」&br;&br;「ええ〜、超便利なのにもったいないです〜」&br;クイ・オリベが2枚目のクッキーを頬張りながら声を漏らす。&br;&br;「確かに、そうですねえ。&br;でも、開拓の道が閉ざされ、近隣の諸島だけでは資源も乏しかったのでしょう……。&br;それに、ジョリウスの門から外へ出る必要がなくなったわけですからね。&br;役目を終えた……というのが、正しいのかもしれません」&br;&br;「それで、魔導器での制御の話に戻りますが、確か十数年前くらいでしょうか。&br;アドゥリンを訪れた博識の女性から「魔導式」という移送術が伝わりまして……」&br;&br;「ほぅ。素晴らしいな……&br;魔導、つまり俺のルーツと同じとは……」&br;&br;ズルコバズルコの反応を受け流しつつ、アナスタズは続ける。&br;&br;「セレニア図書館に眠っていた古い文献から&br;魔導器に関する情報を発掘し、さらに彼女の魔導式による制御を組み合わせました。&br;そうして誕生したのが、現在、我々が日常的に使用しているウェイポイントなのです。&br;その女性の功績による賜物ともいえるでしょう」&br;&br;「へぇ〜。&br;で、それで? その女性ってのは……」&br;&br;「!!!&br;ほら、皆さん! クォン大陸が見えてきましたよ!」&br;アナスタズは、ジリアの突っ込みを制しながら水平線の先を指差した。&br;&br;うっすらと大陸が見えている……!&br;&br;「おおー! ついに到着です〜」&br;「やっとか……俺が正気のうちに辿り着けてよかったぜ」&br;「新しい大地! 新しい魚! 楽しみですね!」&br;「ウェッ……」&br;&br;海原に上がる3つの歓呼と、1つのえずき。&br;&br;アナスタズは、海面に反射する陽光に目を細めつつ、&br;徐々に大きくなる漁港の様子をじっと見つめていた。&image=im00;&br; &image=im00;&image=9733_10.png; "